2016年04月09日

やがて海へと届く(彩瀬まる)

東日本大震災で友人を亡くした主人公の喪失と再生を書いた物語。

旅先で東日本大震災に遭い、後に「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出東日本大震災」を記した彩瀬さんが書かれた、というのがね、なんかね、胸にズズンときました。本当は、そういう予備知識を持たずに読んだ方が良いのかなと思う気持ちもあるにはありますが、”知ってる”んだから、こればっかりはしょうがない。


地震の前日、同棲していた遠野くんに「最近忙しかったから、ちょっと息抜きに出かけてくるね」と伝えたまま行方がわからなくなったすみれ。あれから三年。すみれの友人だった真奈は、遠野くんからすみれと住んでいた部屋を引き払い、すみれの荷物を処分すると告げられる。すみれを亡きものとして扱う遠野くんに反発を覚える真奈だったが・・・。

たまたまだったんだけど、3月10日に読了という、すごいタイミングで読んでしまった。読み始める前に、どうしようかなと少し迷ったんだけど、このタイミングで読んで良かったと思いました。
・・・という言い方をしていいのかどうか、分からないけれど。


三年って短いようで長い。長いようで短い。その感じ方は人それぞれ。遺体が見つかったのならまだしも、行方不明のままなら、気持ちの整理もなかなかつかないのも分かる。遺体が見つかっていても、その死を受け入れられないことだってあるだろう。だから、真奈のことも遠野くんのことも、どちらも、そうなんだろうと思える。でも、それぞれの立場からしたら、「もういいかげんに・・・」と思うこともあるだろうし、「どうしてそんなことが・・・」と思ってしまうんだろうなぁと、ホント切ないなぁと思いながら読みました。

どっちが正しいとか、それは違うと思う、とは言えない。でも、生きるってことは前に進むってこと。すみれがいない時間がどんどん長くなり、自分だけが進んでいくということには、様々な思いや葛藤があるだろうけど、真奈には自分を大切に歩んで欲しい、読み進めるほどにそういう思いが募りました。なので、ラストには、あ~良かったなぁとホッとしました。

まぁ、そのラストの前に、衝撃的な展開があって驚いたけど。いやいや、ここでそういう試練はやめてよー!と思わずつぶやいてしまった。それがあったからこそ、あのラストを迎えられたのかもしれないけどね。

生きている人だけじゃなく、すみれのことも描いてあって、それも、なんというかね、上手く言えないけれど、読んでる立場として、ホッとしたというかね、なんでしょう、救われた、というのかな、そんな思いになりました。
うん、良かった。




(2016.03.10 読了)





やがて海へと届く
講談社
彩瀬 まる

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ラベル:読書 著者(あ)
posted by すずな at 14:51| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

帰って来た腕貫探偵(西澤保彦)

「腕貫探偵」シリーズ4作目。
・・・で、あってるかな?ちょっと自信なし。間違ってたら、どなたかご指摘をお願いします。

と、最初から弱気な感想ですが(笑)前作と違って、今回は元に戻って短編集でした。短編集は苦手だけど、このシリーズは短編の方がスパッと読めて好きかなぁとも思ったりもして。そして、今回も腕貫さんの推理が冴えてました。これからそれを導き出すのかーっ!と、毎回のように心の中で突っ込みを入れてしまいました。

それにしても、今回の腕貫さんは、生身の人間だけじゃなくって幽霊までも相手にしてくれちゃったりして!ビックリですよ、もうね。そういうのアリ!?って気分にもなりますが、実を言うと、その幽霊相手のお話「追憶」が一番好きだったんですよねぇ。面白かったです。逆に、うーんっと思ったのは「指輪もの騙り」かな。ごちゃごちゃと込み入ってるって印象が強くて、あまり好きになれなかった。・・・ような。
あ~実にアイマイな感想ですが、この作品を読んだのが1ヶ月前なんですよね。ちょっと記憶が・・・スミマセン。


ということで、短め感想で。
ガッツリ没頭するという作品ではなかったですが、そこそこ気軽に楽しめるミステリー短編集でした。





・氷結のメロディ
・毒薬の輪廻
・指輪もの騙り
・追 憶



(2016.03.07 読了)





帰ってきた腕貫探偵
実業之日本社
2016-01-07
西澤 保彦

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ラベル:読書 著者(な)
posted by すずな at 11:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヘブンメイカー スタープレイヤーⅡ(恒川光太郎)

「スタープレーヤー」に続くシリーズ2作目。

気がつくと一人で見知らぬ世界にいて、”10の願い”を叶えてくれる。私だったら、どんな願いを望むのだろう。・・・読みながら、ずっと考え続けていました。

最初は、世界に”独りぼっち”なのかと思っていたら、実は同じような「スタープレイヤー」が何人もいて、それぞれが望むことを願い、自分なりの環境を整えていく。国のような集団ができたり、それらが対立して争いがあったり、交易したり。他のスタープレイヤーがどういう風に”10の願い”を叶えているのかを知って、気付いたり、真似てみたり。

スタープレイヤーそれぞれの個性が出ていて面白かった。人間って色んな人がいるんだよな、ということを改めて感じたりもしました。独りぼっちで見知らぬ世界に放り込まれて生きていかなければならない。どうやって自分なりの世界を造り、自分の望みを叶えていくのか。後悔しても望んだものは変えられないし、叶えることが出来る願いは10個しかない。10個って多そうだけど、使おうとすると少ないものですね。自分が創造主になるって、大変なことだよなぁなんてことも思いました。

それにしても、主人公の最初の願いはね、気持ちは分かるけど、どうなのかなぁとか思ったりもして。まぁ、私ならね、たぶん、他の人とは関わらず生きる道を選びそうな気がするからっていうのもあると思うんだけど。だって最初に思いついた願いは「誰かと関わらず、一人で読書に没頭できる世界を造りたい」だったんですもん(笑)いかに、他人との関わりを苦手としているかが表れてますが・・・。それを抜きにしても、あの願いは無いなと思います。そこまで誰かを焦がれたことがないからなのかもしれませんが・・・。


それにしても、このシリーズは今まで恒川さんに抱いていた作品イメージが、ガラリと変わるシリーズですね。1作目の読み始めは戸惑いましたが、これはこれで面白い。2作目ということもあり、この作品世界に慣れたからか、前作よりも没頭できて楽しめました。シリーズ化されるのかな。次はどんなお話が読めるのか楽しみです。




(2016.03.05 読了)




ヘブンメイカー スタープレイヤー (2)
KADOKAWA/角川書店
2015-12-02
恒川 光太郎

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ラベル:著者(た) 読書
posted by すずな at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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