初読み作家さん。直木賞候補の後に本屋大賞にノミネートされていたのを見て、図書館で予約してみました。
1944年ノルマンディー上陸作戦を実行した米国陸軍を舞台にしたミステリー。
なんと言っていいのか、感想が難しい。主人公はコック兵。彼の周りで起こった謎を仲間のコック兵や衛生兵と共に解いていくという、戦場で起こった「日常の謎」を扱ったミステリー。戦場を舞台にしている割には、謎自体はそんなに血生臭いものではなく、食材の「粉末卵」の消失や幽霊騒ぎなど、本当に「日常の謎」なんですよね。ただ、舞台が”戦場”なので、謎よりもその戦場の悲惨さや過酷さの方が胸にずーんとくる。読み終わって、一体どっちがメインなの?と聞きたくなる、そんなお話でした。
私的には、謎自体はそこまで「うっわー!」とテンションがあがるものではないので、戦場ということの方が強く印象に残りました。なので、ミステリー小説というよりも、戦争小説という位置付けになってしまいます。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦ということで、過酷さが半端ない。戦場での兵士たちの姿が胸に迫ってきて、読みながらとても重苦しい気持ちになっていきました。
ただ、そんな中でも、主人公がコック兵ということで、戦場での食事の様子が読めたのは興味深かった。携帯食ばかりなんだと思っていたけど、厨房機器を持ち込んで出来るだけ温かい食事を提供しようとする。物資の調達や機器の運搬と設置。戦場で行うのは大変なことだろ思うんですが、何処でどんな状況であろうと、温かい食事が食べられるというのは、それだけ大切なことだなんだということを改めて感じました。
確かに面白かったけれど、重苦しくもあり、手放しで「面白かったー!」と叫べない、なんとも微妙な作品でした。
(2016.02.26 読了)