2016年02月29日

戦場のコックたち(深緑野分)

初読み作家さん。直木賞候補の後に本屋大賞にノミネートされていたのを見て、図書館で予約してみました。

1944年ノルマンディー上陸作戦を実行した米国陸軍を舞台にしたミステリー。

なんと言っていいのか、感想が難しい。主人公はコック兵。彼の周りで起こった謎を仲間のコック兵や衛生兵と共に解いていくという、戦場で起こった「日常の謎」を扱ったミステリー。戦場を舞台にしている割には、謎自体はそんなに血生臭いものではなく、食材の「粉末卵」の消失や幽霊騒ぎなど、本当に「日常の謎」なんですよね。ただ、舞台が”戦場”なので、謎よりもその戦場の悲惨さや過酷さの方が胸にずーんとくる。読み終わって、一体どっちがメインなの?と聞きたくなる、そんなお話でした。

私的には、謎自体はそこまで「うっわー!」とテンションがあがるものではないので、戦場ということの方が強く印象に残りました。なので、ミステリー小説というよりも、戦争小説という位置付けになってしまいます。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦ということで、過酷さが半端ない。戦場での兵士たちの姿が胸に迫ってきて、読みながらとても重苦しい気持ちになっていきました。

ただ、そんな中でも、主人公がコック兵ということで、戦場での食事の様子が読めたのは興味深かった。携帯食ばかりなんだと思っていたけど、厨房機器を持ち込んで出来るだけ温かい食事を提供しようとする。物資の調達や機器の運搬と設置。戦場で行うのは大変なことだろ思うんですが、何処でどんな状況であろうと、温かい食事が食べられるというのは、それだけ大切なことだなんだということを改めて感じました。

確かに面白かったけれど、重苦しくもあり、手放しで「面白かったー!」と叫べない、なんとも微妙な作品でした。




(2016.02.26 読了)





戦場のコックたち
東京創元社
深緑 野分

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ラベル:著者(は) 読書
posted by すずな at 05:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月28日

とにかくうちに帰ります(津村記久子)

連作短編「職場の作法」4編と短編2編という、ちょっと変わった形式の短編集。あ、短編2編のうちの1編も「職場の作法」と同じ主人公なので、実際は連作5編と単独1編って感じでした。


津村作品は芥川賞受賞作を読んで、微妙な感想だったから距離を取ってたんだけど、ひょんなことからウッカリ手に取ってしまいました。どうかなぁという不安はあったものの、なんというかね、独特のリズムがあって、そこがじわじわと効いてくる感じがして、そんなにのめり込む訳ではないのに、読むのを止められなくて最後まで読んじゃった、そんな感じでした。面白いか、面白くないか、どっちだ?と聞かれたら、面白かった。そう答えるかな。

「職場の作法」の最初の1編「ブラックボックス」がとても印象的でした。頼んだ人の頼み方によって、書類の提出を調整する女性が描かれていて、これがねぇ、もうめっちゃ親近感というかね。ぶっちゃけ、私も真似したくなった(笑)彼女の気持ち、すごくよぉーーく分かる!あ~そんなやり方があったのか!と思いました。今からでも遅くないかなぁ…とか、職場の人たちの顔を思い浮かべながら読んだのでした。

それ以外のお話も、働いている身としては、色々と親近感が湧いたり、なんだりで、なかなか興味深く読めました。

そして、「バリローチェのファン・カルロス・モリーナ」がね。ふと目にしたアルゼンチンのフィギュアスケート選手についての思いが描かれていることもあって、なかなか面白く読めました。フィギュアスケート自体が違った意味でも面白く読めました。ちょっぴりテンションが上がった(笑)

最後の短編は、豪雨の中、なんとか家に帰ろうと頑張る人々のお話。もうね、読みながら、頑張れ、頑張れ、と心の中で声援を送ってましたね。私自身は、田舎町なので車通勤が当たり前で、電車やバスが止まって帰れないって経験がないんだけど。TVのニュースでやってるのを見ると、本当に大変だなぁ、無事に家に辿り着ければいいなぁと思って見てるんですけどね。無事に駅に着いた時には、心からホッとしました。


なんだかクセになりそうな文章で、津村さんの他の作品も読んでみようかなと思ったのでした。



・職場の作法
ブラックボックス
ハラスメント、ネグレクト
ブラックホール
小規模なパンデミック
・バリローチェのファン・カルロス・モリーナ
・とにかくうちに帰ります




(2016.02.23 読了)


とにかくうちに帰ります (新潮文庫)
新潮社
2015-09-27
津村 記久子

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ラベル:著者(た) 読書
posted by すずな at 17:20| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

旅者の歌 魂の地より(小路幸也)

旅者の歌 始まりの地」に続くシリーズ2作目「旅者の旅 中途の王」に第三部を加えて文庫化された1冊。

2作目までは単行本として出版されましたが、オトナの事情で第三部は第二部文庫化で同時収録という形となりました。小路さんのアナウンスで知ったんだけど、キビシイ出版事情が垣間見れて、なんとも複雑な気分です。このシリーズは私的には面白く読んでたんだけどなぁ・・・。

ということで、文庫本2冊で完結となりました。もっと続くと思ってたので、ちょっぴり残念ではありますが、ちゃんと完結してくれて、それはそれで良かったかな。

旅を続けるニィマール達は、新たな集落で旅の終わりとなりそうな情報を入手し、その地へ向かうが・・・。

オトナの事情ががあってしょうがないとはいえ、第二部以上に駆け足だったような気がします。本音としては、もうちょっと彼らの冒険を読みたかったし、一緒に旅をしたかった。もっともっと、この世界を楽しみたかったなぁ。ホント、残念でしょうがない。

それにしても、試しの日に「野獣」や「離者」となってしまう理由というか、真相が、ねぇ。なかなか衝撃的なものでした。だから、ニィマール達の村では大きな争いもなく、みなで寄り添って生きていけるのかと、得心はしたけれど。でも、それって・・・ねぇ。なかなかシビアでキッツイ真相でした。

最後は、旅はまだ続く・・・と、本当の完結ではない終わり方で、どうしても続編を期待してしまいます。できることなら、彼らが両親たちとの再会を果たせる日が来ることを、それを読めることを願います。いつか、そんな日が来ることを、期待して待ちたい。


(2016.02.22 読了)





旅者の歌 魂の地より (幻冬舎文庫)
幻冬舎
2015-12-04
小路 幸也

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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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