2016年01月10日

人魚の眠る家(東野圭吾)

面白かった。
…という言葉を使っていいのかどうか、ちょっと躊躇しちゃいますが。でも、先が気になって最後まで夢中で読んだんですよね。ラストも、最近の東野作品のように、うーーん;;;と肩すかし感を味わうこともなかったし。なので、やっぱり、面白かった!そう素直に言いたい。


6歳の娘がプールの事故で脳死状態となってしまった。その時、夫婦の選択は。そして、彼らを取り巻く人々の思いは・・・。

脳死、子供の臓器提供、延命治療、そして最先端医療技術。重いテーマに、様々な人々の想いが絡み合い、読んでいくうちに、果たしてどれが最良の方法なのか、選択なのか、分からなくなりました。

私自身は、もう随分前に、尊厳死協会に登録をし、臓器提供意思カードも所持しています。そして、もちろんのことながら、それらのことについて家族とも話し合い、それぞれの意志も確認しています。なので、もし私がそうなったら、家族がそうなったら、この物語の家族のように迷うことはないのかなぁと思ってました。私が脳死状態になったら、今でもその意志に変わりはありません。でも、家族が実際にそうなったら、どういう思いが胸の内に広がっていくんだろうと、ちょっと分からなくなってしまいました。握りしめた手がピクリと動いたら。動いたと感じてしまったら・・・。この両親のように、臓器提供に踏み切れるのかどうか。自信が無くなってしまったというのが正直な気持ちです。

でもね、この家族のように機械で娘の身体を動かそうとか、それは思わないかなぁ。なんだかそれはちょっと違うような気がする。娘のことを考えて、というよりも、親のエゴのような気がしてならなかった。なので、その辺は祖父の気持ちにすごく共感しました。

これはどういうラストになるんだろうと思っていたんですが、まさかの母親の行動にビックリ。もし、本当に刺していたら、どういう判断がなされたんでしょうね。司法的には結論付けられても、心情的には・・・。うーん、難しい問題ですね。そして、ずっと続くのかと思いきや、最期は呆気なく訪れる。ご両親、特に母親は、やれるだけのことはやったという思いもあったのかなと思いますが、今度は淡々と受け入れていく様が印象的でした。
重いテーマであったにも関わらず、なんとも清々しいような、そんな気持ちの読後感。自分でも不思議ですし、その気持ちをうまく言葉にできません。

何が正しいかとは今でも言えませんが、自分自身のことも含めて、深く深く考えさせられた作品でした。それにしても、東野さんはよくこういうお話を書けたなぁと、思ってしまいました。




(2015.01.08 読了)




人魚の眠る家
幻冬舎
東野 圭吾

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ラベル:著者(は) 読書
posted by すずな at 15:57| Comment(4) | TrackBack(2) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナイルパーチの女子会(柚木麻子)

ひょ~怖かった!怖い、怖い、怖いよーっ!と呟きながら読みましたです。

柚木さんって、ここまで女子の闇に迫った作品を書かれてましたっけ?いや、今までの作品もイタイなぁとかキッツイなぁと思いながら読んでたとは思うんですけど、これは、また一段、階段を登ったんじゃ?と思ったのでした。

丸の内の大手商社に勤めるキャリアウーマン栄利子。彼女が密かに楽しんでいたのは人気主婦ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」。偶然にも、そのブログ主であるおひょうこと翔子と出会った栄利子は・・・。

容姿も仕事も申し分ない栄利子と人気ブロガーの翔子はどちらも同性の友人がいないというコンプレックスを持っていて、そんな二人が出会って急接近していく様子は、読んでて「ちょ、ちょっと!」とブレーキを掛けたくなったし、そこからの、特に栄利子の行動には引いてしまった。こんな風に接近されたら、誰だってキケンを感じちゃうよねぇ。でも、翔子の危機感の無さもどうかと思ったけどね。どちらも、確かに人との距離感を図るのが上手くないんだなぁと思いつつ、私も人のことは言えないかもと思っちゃった。実のところ、同性異性を問わず、人との距離感が上手く取れないのは私も同じで。どこで間合いを詰めていいのか、どこで詰めすぎちゃったのかと、反省というかね、凹むこともあります。ホント難しいです。。。

確かに栄利子の言動には引いちゃうものもありましたが、派遣社員の女の子の言動も凄かった。まぁ、それに従おうとする栄利子にもビックリだったけど。でも、私だって同じことをしないとも限らない、自分の中にもこんな部分があるかもしれない、栄利子や翔子と同じ状況にならないとも限らない、そう思えて、そっちの方が怖くなってしまいました。

なので、冒頭の怖い、怖い!には二つの意味があるんですよねぇ。怖さ倍増でした。でもね、柚木さん、怖すぎるよー!とツッコミをいれつつ読むのは止められない。二人がどうなっていくのか気になって気になって、一気に読んでしまいました。

怖かったけど、すごく面白かった!





(2016.01.05 読了)




ナイルパーチの女子会
文藝春秋
柚木 麻子

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posted by すずな at 12:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

明治、金色キタン(畠中恵)

「明治・妖モダン」シリーズの2作目。

1作目の感想でも書いてますが、しゃばけシリーズと被ってるんですよねぇ。”明治のしゃばけ”という印象。なので、今作もどうかなぁと思いつつ読んだんですが、まぁ、これはこれで楽しめました。

ただ、最初はなかなか乗り切れなくて・・・。実は読んでる途中で年を越してしまったのでした。廃仏毀釈によって消えた寺と仏像を巡っての騒動を書いた連作短編集なんですが、明治の風潮や社会情勢なども組み込まれていて、読み進めていくうちにだんだんと面白くなっていったので良かったです。

登場人物に関しては、警官の滝や原田はなんとなーく覚えていましたが、他の人物については、ほぼ覚えてなくって;;;1作目の印象の薄さが露呈してしまったような気がします。そうそう。1作目では分からなかった滝やその他の人々の正体もうっすらと分かってきましたねぇ。ただ、ハッキリとは明言されず。文中でもチラッと触れられていましたが、それでいくと、明言はされないままなのかもしれないなぁと思いましたが、どうなんでしょう。それはそれで良いのかもとは思いつつ、ちょっぴり胸のもやもやが・・・(笑)

しゃばけシリーズの外伝でのコラボもあったので、そのうち、もっと大々的に(?)交わることがあるのかな、あるといいなぁとか思ったりもしました。・・・気づいたら、二つのシリーズが一つになってたりして(笑)まぁ、そんなことはないでしょうけど、でも、それくらい雰囲気や設定が似てるというのも確かなこと。今後、どうなっていくのかなぁ・・・。




(2016.01.04 読了)




明治・金色キタン
朝日新聞出版
畠中 恵

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ラベル:著者(は) 読書
posted by すずな at 11:30| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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