阪神淡路大震災によって人生が変わっていた4人の女性を描いた連作短編集。
大震災から20年目が発行日となっているこの作品は、湊さんの思いがいっぱいに詰まった1冊なのだろうと、そんなことを思いながら読了しました。大震災によって人生が変わっていく人々。上手く言葉に出来なくて、不適切な言い方になってしまうのかもしれないけれど、”大”震災とは、そういうものなんだよなぁとつくづく感じました。実際に罹災した訳でもなく、映像でしか見たことはない私ですら、今でも”大震災”と言う言葉に触れる度に、蘇る思いがあります。かの地に住む友人たちを思って過ごした日々を昨日のように思い出したりもするのです。実際に罹災した方々はいかばかりかと思うと・・・。
登場する4人の女性たちは、震災によってそれぞれに抱えたものがあり、トンガへやってくる。そこで出会った人々との交流の中で少しずつ少しずつ気持ちが変わっていく。そして、前を向いて一歩を踏み出そうとする。それは、あの”震災”を自分の中で消化し、そして受け入れていく作業でもあったのかなぁと思いました。そんな彼女たちに向かって、簡単に「がんばれ」とは言えないけれど、どうかそのまま一歩、一歩を踏み出して行って欲しい、そう心から願いました。
どのお話も印象的でしたが、特に最後の章は心に残りました。主人公である千晴と同じように、作者である湊さんご自身も罹災され、トンガ王国に赴いた後、作家となられたとのことで、この章は小説ではなくエッセイなの?とも思えたのでした。おまけに、ラストに明かされたエピソードがあまりにも悲しいもので・・・。それはないんじゃないのーっ!?と思わずにはいられません。
衝撃的なラストでしたが、湊さん特有の「ひぇー」というものではなく、切ないながらもなんだか心が温かくなるような、そんな読後感でした。
うん、良かったなぁ。
・楽園
・約束
・太陽
・絶唱
(2015.07.12 読了)