「きた!」
タイトルを見た瞬間、そう思ったのでした。なんかね、上手くいえないけど、これは私的にすっごくすっごく読みたかった1冊という感じです。もちろん、朝井さんで、ってことですよ。そして、「武道館」には何度か行ったことがあるので、なんとなーく親近感みたいなものを感じたタイトルでもありました。そんな訳で、手元に届くのを心待ちにしていましたが、ようやく読めました。
面白かった!一気読み。
毎回、書いてるような気がするんだけど、朝井さんってなんでここまで女の子の心情を分かるの!?って思っちゃいます。そして、20代男子に心をえぐられる、いい年したおばちゃんがここに~(笑)もうね、本当にね、読んでる間中、イタカッタ。のです。心にツキツキきました。
小さい頃からアイドルに憧れて、オーディションに受かりアイドルグループの一員となった愛子。幼馴染の大地やグループのメンバーとの関係、ファンから求められること、アイドルとしてやってはいけないこと、やらなければならないことなど、本当に様々なことがあって、読みながら「なんか大変だなぁ・・・」とシミジミ思いました。いくら、やりたくてなったアイドルでも、「だって自分で選んだ道でしょ」と簡単には片付けられないよなぁと思いました。10代の女の子が生きていくにはホント大変な世界だよ。
でも、現実に”アイドル”はいるんですよね。この小説に登場したような女の子がたくさん。これを読んだらね、もう”アイドル”してるだけで尊敬しちゃいますよ。そして、TVの中でニコニコ笑っていても、どれだけのことを抱えているんだろうと思うと、切なくなってしまいます。そうまでしても、”アイドル”としていたいのか。・・・まぁ、だからこそ、頑張ってるんでしょうけどね。
それにしても、ネット社会の怖さを改めて感じた1冊でもありました。たった一枚の写真が、ポロリとこぼれたその一言が、これまで築きあげてきたものを一気に壊していく。壊れていく。それを、どうやっても止められない。そして、壊れてしまったものは、もう元には戻らない。あの努力は、信頼関係は、一体何だったんだろうと読んでるこちらが悲しくなっちゃいました。そして、それは小説の中だけでなく、現実社会でも起こっていることなんですよね。私もこうやってブログで発信してますが、何がどう誰かの心に刺さるのか分からないという怖さは、いつも感じています。なので、辛口感想をUPする時は、か~な~り~ドキドキしてるんですよー。でも、「嘘は書かない」というのは最初に決めたことなので、感じたことをそのまま書くというスタンスは守ろうと思っています。もちろん、言葉は選んでるつもりですけどね・・・。どうかな、大丈夫かな。これ打っててドキドキしてきました;;;
「でも、三歳とか四歳の私も、そうしていたんです。十八歳の私がそうしている写真だけが、ここに載っているんです。」
「大地の試合を観に行くのも、同じ学校に通っているのも、お互いの家を行き来するのも、私がアイドルになるずっとずっと前から変わらないことなんです。」
(p283)
一枚の写真から、愛子にとっては辛い展開になったけれど、そばにいて欲しかった人が、ずっとそばにいてくれたようで、それは良かったなぁと、ラストシーンを読みながら思ったのでした。
これから、TVの中でニコニコ笑ってる女の子たちを見て、切なさで胸が一杯になりそうです。彼女たちの笑顔を、素直に受け止められるんだろうか、そんな思いもちょっぴりあります。でも、心から笑ってる子達もきっといるんだと、そう信じるしかないのだと、そんなことも思ったのでした。
よく知ってるようで実はよく知らない世界。とても興味深く読みました。と同時に、「アイドル」に求められること、その多さ、ファンの身勝手さなど、改めて考えさせられる1冊でもありました。
(2015.06.29 読了)