酒問屋の跡取り息子である央介の為に父親が連れてきた少女イオ。「睦月童」と呼ばれ不思議な力を持つイオのお蔭で更生した央介は、やがてイオの出生の秘密を知ることとなり・・・。
久しぶりに「西條さんはファンタジーノベル大賞受賞者だった!」と思い出させてくれるような作品を読んだような気がします。最初は、イオに不思議な能力はあるものの江戸の人情ものという印象が強かったんですが、イオの里に向かってからはファンタジー色がすごく強くなって、「これってこういう話だったのー!?」と、ちょっと驚いたくらい。前半と後半の印象がガラリと変わる作品でした。確かに、そこに戸惑ったりもしたんだけど、人情ものとファンタジーを同時に読めたようでなんだか得した気分にもなったのでした。
とにかく、イオと央介の関係が微笑ましくて良かった。最初はどうなることかと思ったけれど、だんだんとふたりの兄妹のような関係に温かさを感じられるようになって、すごく優しい気持ちになれました。ただ、イオの持つ力のお蔭で、ふたりが遭遇する事件は、そんな優しいものではなかったけどね。切なかったり、憤ったりもしたし、睦月神の力にだんだんと不穏なものを感じるようになったりもしたし。
最後はどうなることかと思ったけれど、まぁ良かったなぁと思えるラストにホッとしました。・・・と、ちょっと歯切れが悪いのは、微妙に不満が残るから(笑)だって、イオがーっ!あんな状態のままじゃあんまりじゃないですか。せめて、もうちょっと先まで描いてほしかったような。てか、続編が書けるんじゃないかな、と思うんですけどね。どうなのかな。ちょっと不穏な空気を感じられるようで、手放しで喜べるようなラストじゃなかったし。ファンタジーなんだから、出来れば「めでたしめでたし」で終わるような、そんなお話にして欲しかったなぁという気持ちもあります。もちろん、こういうラストもありだと思うし、これはこれで好きなんですけどね。
まぁ、なんというか、イオが大好きになっちゃったファンの戯言。ってことです、はい。
(2015.05.20 読了)