東北新幹線に乗って北へ向かう人々を描いた短編集。
旅先で恋に落ち移住した祖母を訪ねる青年、婚約者の実家に挨拶に向かう女性、母の法事のために帰省する男性、両親と共に叔母の結婚式に向かう女の子、そして、そんな人々が乗車する新幹線で働く乗務員の女性が描かれる。それぞれの目的地が、宇都宮、郡山、仙台、花巻と桜前線と共に少しずつ北へと距離を伸ばしていき、最後は乗務員の女性と東京へ帰っていくという設定も良かった。
私は地元から離れたことがないので、遠くの”ふるさと”を想うことはないし、”帰省”というのがどういう感じなのかはよく分からないんだけど。ただ、「懐かしいなぁ」と「面倒くさいなぁ」が半々なんだろうなと、想像してるんだけども。さて、実際のところはどうなんでしょうか。
登場する人々は、それぞれが家族に対して何らかの鬱屈を抱えていたりもするんだけど、それでも「家族」はやっぱり「家族」なんですよね。最後は、ふんわりと温かい気持ちになれるお話でした。タイトルの桜だけではなく、モッコウバラやからたちなどの花が登場するのも印象的でした。花って、どんな花でも、眺めているとその花の持つ優しさに包まれるような、そんな気分になれますね。
どれも良かったんですけど、一番好きだったのは1編目の「モッコウバラのワンピース」かな。こんな孫と祖母の関係っていいなぁと思ったし、何よりもおばあちゃんの勇気ある決断に凄いなぁと思いました。私もいくつになってもワンピースが似合う女性でいたいものです。・・・うーん、でもこれはちょっと自信なし(笑)
そんなこんなで、読み終わった後は心がふわふわと柔らかくなったような、そんな心持ちになれました。良かった。
・モッコウバラのワンピース
・からたち香る
・菜の花の家
・ハクモクレンが砕けるとき
・桜の下で待っている
そうそう!
「ハナモクレン~」を読んだら、ますます宮沢賢治に会いに行きたくなっちゃいました。いつか行きたいな、岩手県。というか、東北地方は未踏の地なので全県!・・・って、ホントいつになるかなぁ;;;
(2015.04.19 読了)