8つの短編集。
結婚相手と食事の嗜好が合わないことに気付き摂食障害が再発してしまった女性を描いた表題作や、DV男ばかりを好きになる女性、マスクなしでは人前に出れなくなってしまった男性など、心の病気を抱えた人々が描かれる。
だんだんと重症化していく人々の姿を読むのはシンドイ部分もあったんだけど、みんながそれぞれの方法で自分と向き合って、前へ進んでいこうとする姿には心から声援を送りたくなりました。
一番好きだったのは、最初に収録されている「ヒット・アンド・アウェイ」かな。同居男性からのDV被害にあっている女性のお話。最初はこの男にムカムカしたし、女性に対しても籍を入れてないんだったら、とっと別れればいいのにーっ!とムキムキ怒りまくってたんですよね。読みながらそんなことを感じたってことは、DV被害者はほとんどが自分を責めたり、なかなか逃げられないっていうことを、頭では理解できていても気持ちの中では理解出来てないんだろうなぁと、そんなことも思ったり。でも、母は強しでした!最後は、スカッとさせてもらえて、本当に良かったなぁと思ったのでした。
タイトル作の「冷蔵庫を抱きしめて」も印象に残っています。一緒に暮らしていくのに、食べ物の好みが違うって本当に大変だろうなぁと思いました。それがストレスとなって、摂食障害が再発してしまった女性が描かれていたんだけど、そのリアルな描写に、こんな風になっていくんだ・・・と、ちょっと衝撃が大きかった。でも、最後は、「ヒット~」と同じように、良かったなぁと思える展開でホッとしました。どうか二人で乗り越えていってほしいです。
この2つの短編とは違った意味で印象に残っているのは、自分と似た男が、あちこちに出没する「アナザーフェイス」。途中までは軽い気持ちで読んでたんだけど、予想外の方向へ進んでいって最後はゾッとしました。これは怖かった!それと「マスク」もなかなか・・・。ラストは怖いままじゃなかったんだけど、だんだんとエスカレートしていく様子が読んでて怖かった。
他の作品も、笑ったり、考えさせられたりとそれぞれに楽しませてもらいました。
・ヒット・アンド・アウェイ
・冷蔵庫を抱きしめて
・アナザーフェイス
・顔も見たくないのに
・マスク
・カメレオンの地色
・それは言わない約束でしょう
・エンドロールは最後まで
(2015.04.13 読了)