「円紫さんと私」シリーズ6作目。
まさか、まさかです!
このシリーズの新作が読めるとは思ってなかったので、発売を知ったときには大喜びしました。いや、ホントに、ものすっごぉーーく嬉しい!この気持ちを表すのに「嬉しい!」だけじゃ足りないけど、他に言葉が浮かばない(笑)
そんなこんなで、ワクワクドキドキしながら読み始めました。ただ、タイトルが・・・。「太宰治」って;;;先日も、太宰をテーマにした作品を読んだばかりで、おまけに興味の薄い作家さんということもあって、感想としてはイマイチだったんですよねぇ・・・。なので、ちょっぴりの不安も抱えつつ、「いや、このシリーズなんだから!」と言い聞かせつつの読書となりました。
が!最初の「花火」を読んだ後は不安しか感じなくなってしまっていました。もうね、ノレナイんですよ。全くノレナカッタんですよ。最初は懐かしい名前にウキウキしてたんですが、だんだんと眉間に皺が寄ってきちゃったような、そんな感じでした。面白さを感じられない。退屈で退屈で、途中で投げ出したくなっちゃいました。本当に。まさか、北村作品で、それもこのシリーズで、そんなことを思う日が来るとは思ってなかったので、予想外の展開に自分でビックリでした。
これは、最後まで読み切れるのか?と不安を感じつつ次の「女生徒」を読み始めたんですが、これが、また予想外に面白くって(笑)最初の章でハードルがぐっと下がったのが良かったのかどうなのか、その後はサクサクすいすいと読み進めることが出来ました。内心、かなりホッとしたり。太宰の「女生徒」の文章が所々で出てくるんですが、これがね、また私の心をグッと掴んでくれちゃいまして。うわ、これは全文をきちんと読んでみたい!と思ったのでした。そんなこんなで、残りは一気読み。なかなか登場しなかった円紫さんも無事に登場し、相変わらずの存在感に嬉しさも倍増でした。
・・・と、いろんな意味で、良かった~!です(笑)
それにしても、太宰の作品から、太宰が使っていた辞書とは?という流れには、普通の”読書好き”の私としては、驚き以外のなんでもありません。研究者がいる以上、こういう読書の仕方もあるんだというのは分かってたけど、改めて、こういう探究心が様々な事柄を解き明かしてくれるんだなぁとしみじみと感じたのでした。
あとですね、主人公の”私”が一気に中年になっていたのにはビックリでした。前作「朝霧」から一気に時間がとんじゃってて最初はすごく戸惑いました。おまけに、「朝霧」のラストは気になる文章で終わってたからさー!あれから、あの人とはどうなったの?まさか、旦那さんなの?とそこも気になってしまって。それなのに、文中では旦那さんの人となりがほとんど描かれてなくって・・・。情報不足にちょっと悶々としちゃいました。てか、今も悶々としてるよーっ!北村さん、あの人とはどうなったのですかー!?
・・・と、そこに拘るのは無粋というものなのでしょうか(笑)
とにもかくにも、思ってもみなかった続編が読めて、懐かしい人々と再会できて、とっても嬉しかった。
・花火
・女生徒
・太宰治の辞書
(2015.04.22 読了)
2015年04月26日
2015年04月23日
桜の下で待っている(彩瀬まる)
東北新幹線に乗って北へ向かう人々を描いた短編集。
旅先で恋に落ち移住した祖母を訪ねる青年、婚約者の実家に挨拶に向かう女性、母の法事のために帰省する男性、両親と共に叔母の結婚式に向かう女の子、そして、そんな人々が乗車する新幹線で働く乗務員の女性が描かれる。それぞれの目的地が、宇都宮、郡山、仙台、花巻と桜前線と共に少しずつ北へと距離を伸ばしていき、最後は乗務員の女性と東京へ帰っていくという設定も良かった。
私は地元から離れたことがないので、遠くの”ふるさと”を想うことはないし、”帰省”というのがどういう感じなのかはよく分からないんだけど。ただ、「懐かしいなぁ」と「面倒くさいなぁ」が半々なんだろうなと、想像してるんだけども。さて、実際のところはどうなんでしょうか。
登場する人々は、それぞれが家族に対して何らかの鬱屈を抱えていたりもするんだけど、それでも「家族」はやっぱり「家族」なんですよね。最後は、ふんわりと温かい気持ちになれるお話でした。タイトルの桜だけではなく、モッコウバラやからたちなどの花が登場するのも印象的でした。花って、どんな花でも、眺めているとその花の持つ優しさに包まれるような、そんな気分になれますね。
どれも良かったんですけど、一番好きだったのは1編目の「モッコウバラのワンピース」かな。こんな孫と祖母の関係っていいなぁと思ったし、何よりもおばあちゃんの勇気ある決断に凄いなぁと思いました。私もいくつになってもワンピースが似合う女性でいたいものです。・・・うーん、でもこれはちょっと自信なし(笑)
そんなこんなで、読み終わった後は心がふわふわと柔らかくなったような、そんな心持ちになれました。良かった。
・モッコウバラのワンピース
・からたち香る
・菜の花の家
・ハクモクレンが砕けるとき
・桜の下で待っている
そうそう!
「ハナモクレン~」を読んだら、ますます宮沢賢治に会いに行きたくなっちゃいました。いつか行きたいな、岩手県。というか、東北地方は未踏の地なので全県!・・・って、ホントいつになるかなぁ;;;
(2015.04.19 読了)
旅先で恋に落ち移住した祖母を訪ねる青年、婚約者の実家に挨拶に向かう女性、母の法事のために帰省する男性、両親と共に叔母の結婚式に向かう女の子、そして、そんな人々が乗車する新幹線で働く乗務員の女性が描かれる。それぞれの目的地が、宇都宮、郡山、仙台、花巻と桜前線と共に少しずつ北へと距離を伸ばしていき、最後は乗務員の女性と東京へ帰っていくという設定も良かった。
私は地元から離れたことがないので、遠くの”ふるさと”を想うことはないし、”帰省”というのがどういう感じなのかはよく分からないんだけど。ただ、「懐かしいなぁ」と「面倒くさいなぁ」が半々なんだろうなと、想像してるんだけども。さて、実際のところはどうなんでしょうか。
登場する人々は、それぞれが家族に対して何らかの鬱屈を抱えていたりもするんだけど、それでも「家族」はやっぱり「家族」なんですよね。最後は、ふんわりと温かい気持ちになれるお話でした。タイトルの桜だけではなく、モッコウバラやからたちなどの花が登場するのも印象的でした。花って、どんな花でも、眺めているとその花の持つ優しさに包まれるような、そんな気分になれますね。
どれも良かったんですけど、一番好きだったのは1編目の「モッコウバラのワンピース」かな。こんな孫と祖母の関係っていいなぁと思ったし、何よりもおばあちゃんの勇気ある決断に凄いなぁと思いました。私もいくつになってもワンピースが似合う女性でいたいものです。・・・うーん、でもこれはちょっと自信なし(笑)
そんなこんなで、読み終わった後は心がふわふわと柔らかくなったような、そんな心持ちになれました。良かった。
・モッコウバラのワンピース
・からたち香る
・菜の花の家
・ハクモクレンが砕けるとき
・桜の下で待っている
そうそう!
「ハナモクレン~」を読んだら、ますます宮沢賢治に会いに行きたくなっちゃいました。いつか行きたいな、岩手県。というか、東北地方は未踏の地なので全県!・・・って、ホントいつになるかなぁ;;;
(2015.04.19 読了)
2015年04月21日
冷蔵庫を抱きしめて(荻原浩)
8つの短編集。
結婚相手と食事の嗜好が合わないことに気付き摂食障害が再発してしまった女性を描いた表題作や、DV男ばかりを好きになる女性、マスクなしでは人前に出れなくなってしまった男性など、心の病気を抱えた人々が描かれる。
だんだんと重症化していく人々の姿を読むのはシンドイ部分もあったんだけど、みんながそれぞれの方法で自分と向き合って、前へ進んでいこうとする姿には心から声援を送りたくなりました。
一番好きだったのは、最初に収録されている「ヒット・アンド・アウェイ」かな。同居男性からのDV被害にあっている女性のお話。最初はこの男にムカムカしたし、女性に対しても籍を入れてないんだったら、とっと別れればいいのにーっ!とムキムキ怒りまくってたんですよね。読みながらそんなことを感じたってことは、DV被害者はほとんどが自分を責めたり、なかなか逃げられないっていうことを、頭では理解できていても気持ちの中では理解出来てないんだろうなぁと、そんなことも思ったり。でも、母は強しでした!最後は、スカッとさせてもらえて、本当に良かったなぁと思ったのでした。
タイトル作の「冷蔵庫を抱きしめて」も印象に残っています。一緒に暮らしていくのに、食べ物の好みが違うって本当に大変だろうなぁと思いました。それがストレスとなって、摂食障害が再発してしまった女性が描かれていたんだけど、そのリアルな描写に、こんな風になっていくんだ・・・と、ちょっと衝撃が大きかった。でも、最後は、「ヒット~」と同じように、良かったなぁと思える展開でホッとしました。どうか二人で乗り越えていってほしいです。
この2つの短編とは違った意味で印象に残っているのは、自分と似た男が、あちこちに出没する「アナザーフェイス」。途中までは軽い気持ちで読んでたんだけど、予想外の方向へ進んでいって最後はゾッとしました。これは怖かった!それと「マスク」もなかなか・・・。ラストは怖いままじゃなかったんだけど、だんだんとエスカレートしていく様子が読んでて怖かった。
他の作品も、笑ったり、考えさせられたりとそれぞれに楽しませてもらいました。
・ヒット・アンド・アウェイ
・冷蔵庫を抱きしめて
・アナザーフェイス
・顔も見たくないのに
・マスク
・カメレオンの地色
・それは言わない約束でしょう
・エンドロールは最後まで
(2015.04.13 読了)
結婚相手と食事の嗜好が合わないことに気付き摂食障害が再発してしまった女性を描いた表題作や、DV男ばかりを好きになる女性、マスクなしでは人前に出れなくなってしまった男性など、心の病気を抱えた人々が描かれる。
だんだんと重症化していく人々の姿を読むのはシンドイ部分もあったんだけど、みんながそれぞれの方法で自分と向き合って、前へ進んでいこうとする姿には心から声援を送りたくなりました。
一番好きだったのは、最初に収録されている「ヒット・アンド・アウェイ」かな。同居男性からのDV被害にあっている女性のお話。最初はこの男にムカムカしたし、女性に対しても籍を入れてないんだったら、とっと別れればいいのにーっ!とムキムキ怒りまくってたんですよね。読みながらそんなことを感じたってことは、DV被害者はほとんどが自分を責めたり、なかなか逃げられないっていうことを、頭では理解できていても気持ちの中では理解出来てないんだろうなぁと、そんなことも思ったり。でも、母は強しでした!最後は、スカッとさせてもらえて、本当に良かったなぁと思ったのでした。
タイトル作の「冷蔵庫を抱きしめて」も印象に残っています。一緒に暮らしていくのに、食べ物の好みが違うって本当に大変だろうなぁと思いました。それがストレスとなって、摂食障害が再発してしまった女性が描かれていたんだけど、そのリアルな描写に、こんな風になっていくんだ・・・と、ちょっと衝撃が大きかった。でも、最後は、「ヒット~」と同じように、良かったなぁと思える展開でホッとしました。どうか二人で乗り越えていってほしいです。
この2つの短編とは違った意味で印象に残っているのは、自分と似た男が、あちこちに出没する「アナザーフェイス」。途中までは軽い気持ちで読んでたんだけど、予想外の方向へ進んでいって最後はゾッとしました。これは怖かった!それと「マスク」もなかなか・・・。ラストは怖いままじゃなかったんだけど、だんだんとエスカレートしていく様子が読んでて怖かった。
他の作品も、笑ったり、考えさせられたりとそれぞれに楽しませてもらいました。
・ヒット・アンド・アウェイ
・冷蔵庫を抱きしめて
・アナザーフェイス
・顔も見たくないのに
・マスク
・カメレオンの地色
・それは言わない約束でしょう
・エンドロールは最後まで
(2015.04.13 読了)