2015年02月08日

キミの名前 箱庭旅団(朱川湊人)

過去や未来だけではなく、夢の世界や現実の世界を自由に出入りできる旅行者(トラベラー)として少年が覗いた世界。その世界の物語を綴った短編集。「箱庭旅団」という短編集の続編。お話の中に必ず少年が登場する訳ではないし、繋がりもないので連作集ではないんですよね。そういう意味では、ちょっと変わった短編集かな。

ほとんどが繋がりはないんだけど、いくつかはリンクしている作品があって、後日談が読めたものもあったのは楽しかった。で、これが2作目だと思っていたら、間にもう1作挟んでるってことに後で気づいてショックを受けてしまったのでした。なんで読んでないんだろう・・・。近いうちに読まなくちゃ。

今回はホラー系よりもSF系が多かったかな。最初の「マミオ、地球を去る」が特にお気に入りでした。異星人が惑星調査員として地球に滞在してたんだけど、猫の姿をしているという設定。任期が終わり、地球を去っていく調査員の行動の気持ちに胸がきゅーんとなりました。

あと、「バルル原理」も面白かった。まぁ、人間としては笑えないお話なんだけど、ね。最後はちょっとゾッとしたし。最後にゾッとしたと言えば「サトミを泣かせるな」も怖かった!ラスト前までは、微笑ましくって良いお話だなぁと思ってたんだけど、まさかそういうオチだとは!確かに死にたくはないけど、死ねないってのは、それはそれでイヤだなぁと思いました。

あと、想像するとシュールでめっちゃ怖いんだけど、「シュシュ~」の2編は思わず笑ってしまうという不思議なお話でした。ホラーなんだけど、コメディみたいだった。1編目を読んだ時に、その後はどうなったんだろうと気になっていたので、その続きが読めたのも嬉しかったなぁ。

様々な趣の作品が読めて面白い短編集でした。2作目を早く読まなくちゃ。



・マミオ、地球を去る
・シュシュと空きカバンの住人
・俺と兄貴が火曜日に
・跨線橋の秋
・クリスマスの呪い
・鬼が来る正月
・よいち異聞
・さよなら、旅行者
・シュシュ、途方に暮れちゃって
・バルル原理
・サトミを泣かせるな
・夢見王子
・ボブ論争
・キミの名前~エピローグ~



(2015.02.07 読了)




キミの名前 箱庭旅団
PHP研究所
朱川 湊人

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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 16:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

風のベーコンサンド 高原カフェ日誌(柴田よしき)

坂木司リクエスト!和菓子のアンソロジーに収録されていた「融雪」を含む6編の連作短編集。

図書館の新刊でこの本を見つけた時の喜び!あらすじを読んで「あ、あのアンソロジー集に載ってたお話の、だーっ!」とテンションが上がりました。アンソロジー集を読んだ時から、百合が原高原にあるカフェを舞台にしたこのお話をもっと読みたいと思っていたので、念願が叶って凄く嬉しい。


お約束ではあるんだけど、やはり何といっても、四季折々に登場するカフェのランチメニューが美味しそうで、美味しそうで!食欲中枢を刺激されまくりました。「ひよこ牧場」のバターやベーコンやソーセージ。「あおぞらベーカリー」の自家製天然酵母のパン。有機野菜の数々。と、百合が原高原にあるお店から仕入れた食材を使った様々なお料理。もうねーっ、もうねーっ!めっちゃ美味しそうでした。読みながらお腹がぐーぐー鳴ってましたよ(笑)

特にタイトルにもなっている「ベーコンサンド」は、「秘密の花園」(バーネット作)に登場したサンドイッチが元になっているということで、子供の頃、バーネット作品が大好きだった私にとっては、食べたくて食べたくてたまらなくなりました。実は、作り方が表紙カバーの折り返し部分に書いてあって、なんだか簡単に作れそうなんですよね。さすがに同じ材料は手に入らないので、多少は味が落ちるかもしれませんが、これは近いうちに是非とも作って食べねば!と思っているところです。
と、こうやって、文章を作っているだけでお腹が・・・(笑)

そんなこんなで、お料理の数々にはテンションが上がりましたが、お話の内容は、なかなかハードでした。カフェを開業したのは離婚協議中の奈穂。元々、東京で女性誌の編集部員として働いていた菜穂は、夫のモラスハラスメントに耐えかねて体調を崩し、離婚を申し入れたが夫は離婚に承知しない。逃げるように百合が原高原にやってきた奈穂は、この自然あふれる土地で人々の優しさに触れながらも、冬は雪に覆われる高原でのカフェ経営は厳しいもの。その上、離婚調停中の夫は心無い言葉を投げつけ・・・。

こうやって、書いていくと本当に奈穂はよく頑張ったなぁとしみじみ思っちゃいます。夫の言葉には、もうね、こちらが怒りまくってしまったくらい酷いものでした。確かに、思いっきり罵倒する訳ではないし、全く的外れなことでもないんですよね。でも、マイナスの言葉ばかりを投げつけられると、気持ちはどんどんと沈んでしまいます。妻だと思ってる相手に、どうしてそこまでの言葉を紡げるのか。不思議でしょうがなかった。奈穂のことを思うと堪らない気持ちになりました。このまま平行線のままなのかな・・・と不安になりましたが、最後はホッとできるラストで良かったです。

そういえば、田中さんの正体は、割と早い段階から予想出来たんだけども。あそこまで気づかないのは不自然じゃないのー!?とツッコミも入れてみる(笑)でも、第三者の私だったら気づけるけど、その当事者になると、案外、見えないものなのかもしれませんね。
・・・と納得するのは、ちょっと甘すぎ?

村岡とはどうなるんだろうと思ってましたが、最後の最後でようやく二人の関係が一歩進んで嬉しかった。まぁ、この先はちょっと長そうだけど(笑)でも、二人のペースで二人らしい関係を築いていって欲しいなぁと思いました。いつか、二人のその後も読んでみたいです。


お腹も心も満腹になれるお話でした。満足。



・風音
・夕立
・豊饒
・夢鬼
・融雪
・花歌



(2015.02.05 読了)






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ラベル:読書 著者(さ)
posted by すずな at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夜また夜の深い夜(桐野夏生)

母と二人でナポリのスラム街で暮らすマイコ。父親が誰かも分からず、アジアやヨーロッパの国を転々とし、幼い頃は名前を偽って学校へ通っていた。整形を繰り返す母の本名は何なのか。何を隠して、何から逃げているのか。ある日、「MANGA CAFE」を開いたというシュンと知り合ったマイコは・・・。


マイコが七海に宛てた手紙形式で語られる。マイコが語る母との日々。母親が何もマイコに教えてないので、何もかもが謎。どうして、名前を偽らなければならないのか。母は整形を繰り返すのか。各地を転々と逃げ続けなければいけないのか。読めば読むほど、謎は深まるばかり。そして、とうとう母のOKITEに背いてしまったマイコのその後などなど。もうね、知りたりたいことがてんこ盛りで、続きが気になって、気になって、夢中で読みました。

とはいえ、内容的には明るいものではなく、心が重くなるばかり。家を飛び出したマイコが知り合ったエリサやアナの生い立ちはすごく過酷で、もう本当に、読んでいて心がずんずんと重くなるばかりでした。でも、現実もこんなものなんだろうと思うと、そこから目を反らせないというか、ね・・・。

どうなるんだろう、マイコと母はこのまま会えないままなのか、そして、母親が抱える秘密って・・・と、不安や妄想や興味が最高潮に達したところで真相が明かされる。

・・・え。あれあれ。うーーーん。

思ってたよりも、真相とラストは呆気ないものでした。もっと、なんというかね、色々とドロドロとぐちゃぐちゃと・・・そんなものかと思ってたんだけどね。って、こんな書き方じゃ、意味不明ですね。でも、他に書きようがなくって;;;ラストが、いつの間にか「めでたし、めでたし」の明るいものになってたのは、良かったとは思うんだけどねぇ。桐野さんだったので、もっと違ったラストを期待しちゃったようです。

微妙に置き去り感を感じてしまったのでした。ちょっと残念だったかな。




(2015.02.04 読了)





夜また夜の深い夜
幻冬舎
桐野 夏生

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ラベル:読書 著者(か)
posted by すずな at 07:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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