福井から北海道のトムラウシに移り住んだ宮下家の1年間を綴ったエッセイ。
あぁ、宮下さん、いいなぁ。やっぱり好きだなぁ。
・・・と、そんなことを思いながら読みました。エッセイが苦手な私が、”苦手”だということを一度も感じることなく最後まで読めたというのは、それはそれは、とーっても貴重なことです(笑)読了後、エッセイというより、小説を読んだような気分になりました。そう、まさにあの「大草原の小さな家」を読んだ時と同じような気持ちになりました。←本書を読んだ人にはわかる(笑)
なんといっても、面白かった!もうね、笑った、笑った!最初から最後まで、なんでこんなに笑えるんだ!?と思えるくらい笑いっぱなしの1冊でした。宮下家の子供たちの言動に笑い、その子供たちへの宮下さんのツッコミに爆笑。てか、宮下さんのツッコミが素晴らしかった。もうね、笑いのツボを押されまくり~でした。
北海道の大自然に囲まれたトムラウシ。寒さ厳しい土地での暮らしは、笑えることばかりではなく、逆に大変なことの方が多かったんじゃないかと思うんだけど、そんなことを感じさせず、逆に「私も暮らしてみたい!」と思わせる魅力あふれる言葉の数々が綴られています。実際、とても魅力溢れる土地ではあると思うんですけどね。山村留学してきた家族が何家族も、そのまま移住してしまっているようだし、宮下家の人々だってトムウラシでの暮らしに凄く未練があるようだし。
でもね、なんといっても、その寒さが凄かった。読んでで、ひえぇぇ~~~っと思ったのが「コンタクトレンズが凍った」というところ。まつ毛が凍るのは、まだ予想がつく範囲内なんんだけど、眼に入れているコンタクトまでが凍るって、それって、それってーーーっ!?と、読みながら慄きました。コンタクト愛用者で、その上、寒さの苦手な私にとって、それだけでトムラウシでの暮らしは無理だと思わせるに十分でありました。夏ならまだいいけど、冬は無理だわ、きっと。
と思いつつ、そんな暮らしを楽しめる宮下家の人々のことを、ちょっと羨ましいなぁとも思ったりしたのでした。
たーっくさん笑ったけれど、時々挟まれる鋭い言葉にハッとさせられることもありました。それは、やぱり物書きとしての宮下さんだからこその言葉なのかなぁとも思ったんですが。笑いっぱなしの中にあって、その言葉のひとつひとつにピリッと身の引き締まる思いがしたりして、それがこのエッセイの良いスパイスとなっていたように思います。
こんなに気にしているなんて、きっと息子たちは思わないだろう。思わなくていい。親の心配なんて知らなくていいんだよ。知ったら何もできなくなっちゃうからね。(p107)
特に印象に残っているのは、学校行事で中学生の息子さんたちが一泊で登山に向かったときの宮下さんの言葉。数年前の夏に遭難事故が起こった山。全国ニュースでも報道され、私も覚えてる。そんな山に登った息子たちを心配するあまり、登山口近くまで様子を見に行ったりした宮下さん。そんな宮下さんが最後に綴った言葉なんですが、親としての強さと子供たちへの深い愛情が感じられて、しゃきっとした気持ちになりながら、じ~んとしたのでした。
あと、なっちゃんのことも印象に残っている出来事のひとつ。宮下さんご自身の体調についてもなんだけど、自分の心や身体って分かっているようで、分かってないのかもしれないんだなぁと思いました。でも、心と身体が一致しないと、どこかにその歪みが現れる。その現れた歪みを見逃さず、それと向き合えるようにならなきゃなぁと、そんなことも思ったのでした。
最後は、なんだかじわじわときて、気が付いたら涙が溢れていました。すっごく楽しく読んでいたので、自分でも泣いていることにびっくりしちゃった(笑)何が、とは上手く言えないんだけど、心の奥のひだひだにじんわり響くものがありました。
読み終わって、表紙を撫でながら「あぁ、素敵な本を読めたなぁ・・・」としみじみと浸ったのでした。でも、なんだか名残惜しくって、何度も何度も、何度も、パラパラとページをめくっては読み返したりして。そんなことの繰り返しで、その夜はなかなか寝られなかったのでした。
こういう読書体験は久々だし、それがエッセイでというのは初めての経験でした。
この本を読めて本当良かった。
(2015.02.19 読了)
**追記**
読了後に思ってもみなかったような驚きの出来事がありました。それは、とてもとても嬉しい出来事で、あわあわと焦りまくりながらも、ふわふわと舞い上がってしまったのでした。
素敵な本を読んだ後に、すごく嬉しい出来事があって、もうね、本当に忘れられない作品となったのでした。
ありがとうございました。
何があったの!?と思ってる方もいらっしゃるとは思いますが、それはね、私の心の奥に大切に仕舞っておきたいので、内緒ということで、ひとつ宜しくです(笑)
2015年02月23日
2015年02月19日
怒り(上・下)(吉田修一)
うーむ。うーーーむ。うむむむむぅ。
・・・と、唸りたくなるような、なんとも読後感の悪い作品でした。
上下巻というボリュームに慄いて読もうかどうしようか迷っていたんだけど、本屋大賞にノミネートされたので「これは読まねば!」と思って手に取りました。
八王子市の住宅街で起こった夫婦惨殺事件。犯人はすぐに特定されたものの、逃亡して1年が過ぎても捕まらない。そんな頃、房総半島に住む父娘、東京にすむゲイの青年、沖縄の離島に移住した高校生の前に現れた前歴不詳の男性。それぞれが、謎の男性に惹かれていくが・・・。
たしかに面白かった。特に上巻。もうね、どうなる、どうする、どういうことーっ!?ってな感じで、先へ先へとページを繰る手が止まらない。そろそろ寝なきゃ・・・と思ってはいるんだけど、先が気になって寝れなーい!そんな読書となりました。下巻も終盤近くまではそんな感じで読んだんですけどね。いかんせん、ラストがねぇ・・・。こういう終わり方って、これはこれでアリだとは思うけど、モヤモヤばかりが残ってしまって、なんともスッキリしない。おまけに重い。もう、めちゃくちゃ重い。ずずーんときて、それがなかなか払拭できない、そんな感じでした。
*****
ちょっとネタバレ含みます。
未読の方はご注意を。
*****
なんといっても、辰哉がね;;;彼のことを思うと堪らない気持ちになります。切ないとか、痛いという言葉では足りない。高校生の彼が、どうしてこんな重い荷物を背負わなければならないのか。泉の母親の気持ちも分からないでもないけど、自分の娘の為の行為だったのに・・・。自分たちだけ逃げるのか?と、どうしてもそんな思いがよぎってしまって、割り切れない気持ちになりました。
そして、ゲイカップルの結末も堪らないものでした。どうして・・・と思わずにはいられない。彼はずーっと後悔を背負っていかなければならないんですよね。そこまで辛い運命を背負わせなくてもいいのに・・・と、そんなことをついつい思ってしまいます。
それにしても、「人を信じる」って本当に難しい。親しくなればなるほど、知りたいという思いは強くなるし、それを隠されるとアレコレ想像してしまって、疑う気持ちも芽生えてしまう。すべて教えて欲しいという気持ちは、何度蓋をしても開いてしまうものです。その気持ちを抑えきれなくなって、つい・・・。そして、後悔の日々が始まるんですよね・・・。登場した父娘のように、なんとか挽回できればいいけれど、そうでなければ一生、後悔したままなんでしょうか。辛いなぁ・・・。
読み終わって、こんなに重く苦しい気持ちになる小説も久しぶりでした。もうちょっと、生きてる人たちに希望が見えるようなラストにして欲しかったなぁと思ってしまいます。結局、最初の事件の動機とか、真相も分からないままだったし。
もう、ホントにね、なんとも後味の悪い作品でした。インパクトはあったけどね。
(2015.02.17 読了)
・・・と、唸りたくなるような、なんとも読後感の悪い作品でした。
上下巻というボリュームに慄いて読もうかどうしようか迷っていたんだけど、本屋大賞にノミネートされたので「これは読まねば!」と思って手に取りました。
八王子市の住宅街で起こった夫婦惨殺事件。犯人はすぐに特定されたものの、逃亡して1年が過ぎても捕まらない。そんな頃、房総半島に住む父娘、東京にすむゲイの青年、沖縄の離島に移住した高校生の前に現れた前歴不詳の男性。それぞれが、謎の男性に惹かれていくが・・・。
たしかに面白かった。特に上巻。もうね、どうなる、どうする、どういうことーっ!?ってな感じで、先へ先へとページを繰る手が止まらない。そろそろ寝なきゃ・・・と思ってはいるんだけど、先が気になって寝れなーい!そんな読書となりました。下巻も終盤近くまではそんな感じで読んだんですけどね。いかんせん、ラストがねぇ・・・。こういう終わり方って、これはこれでアリだとは思うけど、モヤモヤばかりが残ってしまって、なんともスッキリしない。おまけに重い。もう、めちゃくちゃ重い。ずずーんときて、それがなかなか払拭できない、そんな感じでした。
*****
ちょっとネタバレ含みます。
未読の方はご注意を。
*****
なんといっても、辰哉がね;;;彼のことを思うと堪らない気持ちになります。切ないとか、痛いという言葉では足りない。高校生の彼が、どうしてこんな重い荷物を背負わなければならないのか。泉の母親の気持ちも分からないでもないけど、自分の娘の為の行為だったのに・・・。自分たちだけ逃げるのか?と、どうしてもそんな思いがよぎってしまって、割り切れない気持ちになりました。
そして、ゲイカップルの結末も堪らないものでした。どうして・・・と思わずにはいられない。彼はずーっと後悔を背負っていかなければならないんですよね。そこまで辛い運命を背負わせなくてもいいのに・・・と、そんなことをついつい思ってしまいます。
それにしても、「人を信じる」って本当に難しい。親しくなればなるほど、知りたいという思いは強くなるし、それを隠されるとアレコレ想像してしまって、疑う気持ちも芽生えてしまう。すべて教えて欲しいという気持ちは、何度蓋をしても開いてしまうものです。その気持ちを抑えきれなくなって、つい・・・。そして、後悔の日々が始まるんですよね・・・。登場した父娘のように、なんとか挽回できればいいけれど、そうでなければ一生、後悔したままなんでしょうか。辛いなぁ・・・。
読み終わって、こんなに重く苦しい気持ちになる小説も久しぶりでした。もうちょっと、生きてる人たちに希望が見えるようなラストにして欲しかったなぁと思ってしまいます。結局、最初の事件の動機とか、真相も分からないままだったし。
もう、ホントにね、なんとも後味の悪い作品でした。インパクトはあったけどね。
(2015.02.17 読了)
2015年02月17日
あぽわずらい あぽやん3(新野剛志)
シリーズ3作目。
遠藤の勤める大日本航空が事実上の倒産で、カウンター業務が委託されることになり、遠藤たちは春以降は転勤となる。その、委託移行に伴う仕事に取り組むうちに次第に遠藤の心が疲れてしまい・・・。
いつの間にやらドラマ化されててビックリしました。ま、当然ながらドラマは見てないけどね(笑)
最初の巻とは、ちょっと雰囲気が変わってきたかなぁと思える巻でした。”空港で起きる騒動に必死で対処するあぽやんたち”だったのが、”会社の経営悪化でそれに振り回されるあぽやんたち”という感じでした。読んでて、ちょっとシンドイなぁと思える部分もあったのでした。
頑張って、頑張って、頑張って・・・フトした瞬間に、ぷつりと切れる。切れちゃったら、自分では、もうどうしようもなくなってしまう。切れる前に、なんとか出来ればよかったんだけど、状況がそれを許さなかった。自分は大丈夫だと思っていた・・・。そんな遠藤の姿が痛々しかったです。
でも、遠藤のことを信じる森尾さんと仲間たちの様子や、占い師やマッサージ師として光春に癒されたりもしました。それにしても、何気に光春って凄い!私もガチガチに固まった身体を光春にほぐして欲しいよー!と切実に思ってしまいました(笑)
これって、シリーズ最終巻になるのかなぁ・・・。出来るなら、その後の遠藤の様子も読んでみたいものです。
(2014.08.01 読了)
遠藤の勤める大日本航空が事実上の倒産で、カウンター業務が委託されることになり、遠藤たちは春以降は転勤となる。その、委託移行に伴う仕事に取り組むうちに次第に遠藤の心が疲れてしまい・・・。
いつの間にやらドラマ化されててビックリしました。ま、当然ながらドラマは見てないけどね(笑)
最初の巻とは、ちょっと雰囲気が変わってきたかなぁと思える巻でした。”空港で起きる騒動に必死で対処するあぽやんたち”だったのが、”会社の経営悪化でそれに振り回されるあぽやんたち”という感じでした。読んでて、ちょっとシンドイなぁと思える部分もあったのでした。
頑張って、頑張って、頑張って・・・フトした瞬間に、ぷつりと切れる。切れちゃったら、自分では、もうどうしようもなくなってしまう。切れる前に、なんとか出来ればよかったんだけど、状況がそれを許さなかった。自分は大丈夫だと思っていた・・・。そんな遠藤の姿が痛々しかったです。
でも、遠藤のことを信じる森尾さんと仲間たちの様子や、占い師やマッサージ師として光春に癒されたりもしました。それにしても、何気に光春って凄い!私もガチガチに固まった身体を光春にほぐして欲しいよー!と切実に思ってしまいました(笑)
これって、シリーズ最終巻になるのかなぁ・・・。出来るなら、その後の遠藤の様子も読んでみたいものです。
(2014.08.01 読了)