面白かった!
「空の彼方」という未完の短編から始まり、その短編が北海道を旅する人々の手に次々と渡っていくという連作短編集。
最初の短編を読んだ時、一昔前の文体もだし内容もイマイチで、おまけに中途半端な終わり方で未完という、本当になんだかなぁ・・・な物語で、これはちょっと大丈夫?と、自分と湊さんに突っ込みを入れたんですよね。まさかの短編集?ってこともあって、読了出来るかなと、いきなり不安になりながら次の短編を読み始めたんですが・・・。
いやいや、いやいや。湊さん、ほんっとーに、ごめんなさーいっ!と平謝り。最初の短編はその後のお話の為の振りだったんですね。連作集になってたんですね。うわー、挫折しなくてホント良かった・・・としみじみ思いましたです、はい。短慮はいかんよ、うん。
・・・と、ちょっと動揺してますが(笑)
妊娠中の女性、実家のかまぼこ工場を継ぐことになった男性、娘と進路のことで衝突している男性などこれからの人生に対して様々な思いを抱えて北海道を旅している人々。そんな職業も年齢も性別もバラバラな人々の間でバトンのように受け渡されていく未完の短編「空の彼方」。だれかの日記のようでもあるその物語を読み、それぞれが自分の抱えた思いを反映し、自分なりのエピローグを想像していく。そして・・・。
主人公が変わる度に、「空の彼方」のあらすじが書かれているんだけど、立場や抱えている思いによって、こんなにも変わるものなのかと驚きました。どこに焦点を当てるかで、ずいぶんと変わるもんなんですねぇ。それらを比べて読むのも面白かった。そして、それぞれに合わせて変化をつけた湊さんも凄いなぁと思いました。
未完の短編を受け取った人々が、それぞれに物語の結末を想像していく。想像というか、願望だったりもするんだけど、こちらも、抱えた思いによって違ってくるんですよね。そういう作業をしながら、自分の思いを消化というか、昇華していく。そして、一歩を踏み出していく。あぁ、こういう読書が出来ると嬉しいなぁと思いました。今の私だったら、この「空の彼方」という物語にどんな結末を創るかなぁ・・・と、そんなことを想像したりもして。いつもの読書とは、ちょっと違った読み方も出来た作品でした。
次々に人の手に渡っていく物語は、やがて・・・。
最後のお話は、もうね、そうきたかーっ!と唸ってしまいましたよ。うわ、そういうこと!?と、分かった途端、テンションがあがりました。そして、未完の物語の本当の結末もちゃんと書かれていて、最後は思わず涙腺が緩んでしまいました。ハムさんって、なんて素敵な男性なんだ!と、絵美ちゃんがとっても羨ましくなりました。
心に沁みるお話でした。
・・・って、湊作品の感想じゃないみたい(笑)
・空の彼方
・過去へ未来へ
・花咲く丘
・ワインディング・ロード
・時を超えて
・湖上の花火
・街の灯り
・旅路の果て
(2015.01.21 読了)